研究概要 |
本研究題目では,昨年度に引き続き,初期値問題の解に対する離散変数法として,線型多段階法を“先読み”型に拡張するlook-ahead linear multistep method(LALMM)を提唱し,これを従来の離散変数法と並ぶ方法として確立することを目指した.LALMMにおける収束性および安定性については,昨年度成果をあげることができたので,これは同志社大学理工学研究報告第51巻(2010)に発表した。これを基礎に,2段階(two-step)であるLALMMスキームを研究した。次数条件を満足するように修正子方程式をまず設定し,これに見合うように予測子方程式を設定するという手順で,複数個のスキームを導出し,次いでその安定性解析を行い,応用性の高いとみられるスキームを見いだした。これらに対して初歩的な数値実験を行い,従来の方法と比肩できる性能を確認した。元来目指すべき常微分方程式系に対しても応用可能性を確認すること,さらに2段階LALMMのスキームを開発すべく,研究を継続している。 また関連する研究として,研究協力者・江崎信行とともに芝草の成長に関する数理モデルを試み,周期係数をもつ線型常微分方程式としてのモデルとその数値シミュレーションを行って,モデルと現実の照合と,さらなる発展可能性についても研究した。この研究については,遅延時間(time-delay)を考慮した,遅延微分方程式(delay differential equations)としてモデル化できる可能性もあり,卒業研究学生・金川卓史にその端緒を始めさせたところでもある。
|