研究概要 |
本研究題目では,前2年間に引き続き,初期値問題の解に対する離散変数法として,線型多段階法を"先読み"型に拡張するlook-ahead linear multistep method(LALMM)を提唱し,これを従来の離散変数法と並ぶ方法として確立することを目指した.今年度は2段階(two-step)であるLALMMスキームについて集中して取り組み,4次の収束次数をもつ予測子・修正子の組を4通り導出した。 Schurの方法によって線型安定性解析を行った結果,このうち1組についてはA安定性を,他の3組についてはA(θ)安定性を達成することを見いだし,4次法である古典的Runge-Kutta法,通常の線型多段階法の限界を突破する離散変数法を確立することができた。さらに,これらの方法による連立系の場合の数値実験を,2体問題のKepler方程式を例題として精密に実施したところ,従来法をはるかに凌駕する性能を示した。すなわち,古典的Runge-Kutta法と比較すれば,数十倍の高速性を達成した。しかも系の硬度(stiffness)が大きくなり,数値解に対して厳しくなるほど,優位性が増すことが示され,LALMMの有望性を明確に示すものである。これらの成果の一部は,同志社大学理工学研究報告第52巻(2011)に論文発表するとともに,2011年12月の応用数学合同研究集会(日本数学会応用数学分科会主催),2012年3月の第5回International Conference on High Performance Scientific Computing(Hanoi,Vietnam)などで講演発表した。研究成果全体をまとめた論文を現在準備中である。 また関連する研究として,研究協力者・江崎信行とともに芝草の成長に関する数理モデルを試み,季節要因とともに人為的損傷要因も含めた線型常微分方程式によるモデルと,その数値シミュレーションを考察し,2011年9月の日本応用数理学会年会において講演発表した。
|