研究概要 |
研究計画に従い,22年度は次の研究を行い,各研究成果の報告を行った. (1) 上三角と最下行要素を考慮した前処理の開発とその数学的妥当性の証明 前処理を多段階に適用することで前処理効果の相乗効果などについて調べた.定常反復法に対する前処理行列はシンプルなアルゴリズムであるが,最適SOR法よりも優れていることを数値実験から示した.最適SOR法はその最適パラメータを推定することが困難である.この研究成果を応用数理学会論文誌に投稿した(雑誌論文の1件目である). (2) 超大型行列へ適用可能な前処理行列の開発 大型行列は基本的に要素が疎であり,各要素が小さくなる傾向がある.前処理の効果はその問題によるが,境界要素法で得られるような非対称密行列に対して,ある条件が必要であるが,我々の前処理が効果的であることを国際会議(ICCAM2010ベルギー)において発表した. (3) CG法系列の解法に適した係数行列の要素を用いた前処理行列の開発 CG法も様々な手法が開発されているが,CG法もまた前処理が必要である.我々が開発している定常反復法に対する前処理行列は,CG法系列の手法にも適用可能であることがいくつかの数値実験から得られた.さらに,CG法系列に適した前処理行列を開発することは現在も継続して行う. (4) 前処理化法とCG系列のハイブリッド化の研究 通常のSOR法ではなく,SOR-like法をCG系列のCGS法に対して適用するハイブリット法を開発した.SOR-like法は定常反復法が収束しない問題に対しても適用可能であり,CG系列の手法とハイブリットすることで効果が得られることを国際会議(ICCAM2010ベルギー)にて報告した.
|