研究概要 |
研究の目的に従い,非優対角行列に対しての解法として,定常反復法であるSOR-like法と非定常反復法であるCGS法やBiCGStab法とのハイブリット法を開発し,数値実験を行った.研究実施計画にそって23年度は以下の研究を行った. 1.具体的な問題への適用 分担者・仁木将人を中心に海水の汚染拡散についての研究を進めた.移流拡散問題を解く際に,現れる線型方程式を解くために,前処理付反復法を適用した.このような問題を解く際に現れる特殊な問題に対する解法として,SOR-like法の利用を試みた.係数行列の性質が非優対角行列であるので解くことが困難な場合であるが,提案するハイブリット法が利用できることが確認できた. 2.超大型行列へ適用可能な前処理行列の開発 扱う問題は大型で疎な問題であり,その特性を利用して非零要素のみの演算を行っている.直接,係数行列に前処理行列を掛けるのではなく,反復過程における残差ベクトルに対して処理を行っているため,超大型にも対応しうると考える.実験では,最大で2万次元弱の問題を扱ったが,まだ小さい問題である.計算機環境を整えて,さらに超大規模の問題の解法について議論を行う予定である. 3.CG系列の解法に適した係数行列の要素を用いた前処理行列の開発 SOR-like法で表現される行列が,CG系列の解法の前処理として利用され,効果的な結果を示した. 4.前処理付定常反復法とCG系列のハイブリット法の研究 SOR-like法とBiCGStab法を組み合わせた手法を試みた結果,非優対角な問題に対して,より少ない演算時間で収束する結果を示した.
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