研究概要 |
(1)代数的場の量子論や量子統計力学を包括する理論形式である代数的量子力学の枠組みにおいて時間作用素の理論を展開した.特に,ハミルトニアンが時間作用素を持てば,対応するリューヴィル作用素も時間作用素をもつことが証明された.この結果は,量子統計力学への応用において,相関関数の時間減衰の一般的評価を与えるという意味で重要な結果である. (2)スピン1/2の相対論的な量子荷電粒子-ディラック粒子-と量子化されたベクトルポテンシャル,すなわち,量子輻射場が相互作用を行う量子系を数学的構造を解析した.ディラック粒子は4次のエルミート行列値関数で記述されるポテンシャルの中にあると仮定される.以下の結果を得た: (i)系の全エネルギーを表す全ハミルトニアンによって生成される強連続1パラメーターユニタリ群がディラック粒子の位置作用素の定義域を不変にすることを証明した. (ii)ディラック粒子の位置作用素のハイゼンベルク作用素(位置作用素の全ハミルトニアンによる時間発展)に対する厳密な公式を確立した. (iii)系の時間発展およびハイゼンベルク作用素の行列要素に対して,ディラック粒子の電荷に関する漸近展開あるいは摂動級数展開を厳密に導いた. (iv)諸々の量に対する輻射補正(量子電磁場との相互作用に起因する補正因子)を導出した.
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