本研究は、一般弾性波動方程式に対して、解の新しい表示法を開発し、それを逆問題に活用するとともに、逆問題で重要となる弾性波の基本性質を明らかにすることを目指している。本年度は、前年度開発した「波の表示法」の改良を行い、波動に関する逆問題を研究する。具体的には次のことを目指した。 a.前年度得た「波の表示法」を一層扱いやすいものに改良する。 b.この表示を使って、逆問題を、数値解析を含めて再構成などの観点から究明する。 c.この逆問題に関連する抽象論的な課題を整理し、その解決を模索する。 aを進める中で前年度の「波の表示法」に欠陥があることが判明した。本年度はこの欠陥を解消することにかなりの時間を費やした。この解消には、かなり基本的なことに立ち返った考察が必要となったが、解消のアイデアを得ることができた。これを完全なものに仕上げるのは来年度の課題となった。 このような状況であったので、bについては十分な成果を得ることができなかった。しかし、上記の「波の表示法」が当初の期待通りになったとして、取り組むべき逆問題の設定などを考察した。 cについては大きな進展はなかった。しかし、上述の「アイデア」が、弾性波動方程式より広い双曲型方程式に対して適用可能であることが分り、このアイデアを使って一般的な双曲型方程式に対して新しい解表示の開発することを試みた。汎用性のある方法としてさらに発展させる価値ありと判断した。来年度の課題としたい。 以上のことを共通理解するため、連携研究者の間で研究集会を開催した。
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