研究課題/領域番号 |
21540162
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
池畠 優 群馬大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90202910)
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キーワード | 解析学 / 境界値逆問題 / 逆散乱問題 / 熱方程式 / 波動方程式 / Helmholtz方程式 / Enclosure method / Probe method |
研究概要 |
1.ひとつの点源または平面入射波による、Helmholtz方程式を支配方程式とする、 音響的に硬い物体による音波の散乱の逆問題の2次元版への囲い込み法の応用について 再考した。従来は、多角形状の障害物の凸包の頂点を得るには、二つの独立かつ 正則な方向に対する指示関数を用いていたのだが、今回は、一つの方向に対する 指示関数あ対数微分を霜いれぼ凸包の頂点の位置が抽出されることを証明した。 この結果は、手間を半分にするものであり、副産物として,正則でない方向の情報も得られることがわかった。 2.物体から離れた場所で、初期データを与えて波を発生させ、その波を物体に当て散乱させる。 散乱された波を物体から離れた場所で有限時間観測し、得られたデータから物体の位置あるいは形状についての情報を抽出する問題は典型的な逆問題である。 今回は、初期データを発生させた場所で観測された波、すなわち、後方散乱データから物体のどんな情報が抽出できるかについて考察した。 その結果、この場合でも囲い込み法が適用できて、物体の表面における境界条件が消散的または物体の内と.外で屈折率が異なる場合について、粗く言って、十分長くしかし有限の時間で観測された後方散乱データから、初期データの台と物体との距離が抽出できることがわかった。データを発生させる場所と観測する場所が局所化されている場合における囲い込み法の新しい展開を与えた点にこの結果の意義がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
熱や波動方程式等の解を使って記述される逆問題における観測データは時間に依存する。 特に、有限観測時間におけるそれらをどう使えば未知の介在物、空洞あるいは障害物等の存在する場所の情報が解析的に抽出できるかという問題は基本的問題である。この問題に対する大きな進展は、囲い込み法が、汎用性の高いひとつの接近方法を提供することが分かった点である。しかも、後方散乱データの場合に適用できたというのは驚きである。また、一組の入射波を用いた,固定波数における音波の障害物による散乱の逆問題への囲い込み法の応用については、指示関数の対数微分を用いることにより、従来の結果より手間が半分になりしかも収束がはやくなるという結果を得たのであるが、これも意外であり、計画を超えた進展である。
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今後の研究の推進方策 |
時間に依存した逆問題における囲い込み法は、さらにさまざまな形で展開できるはずである。 この信念のもとさらに考究したい。ただ、探針法における未解決問題については、さらにひたすら考えなければならない。
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