研究概要 |
村田實は球対称リーマン多様体上の熱方程式を研究し、「定数関数1が付随する楕円型作用素の半小摂動である」ための幾何的な特徴付けと初期値問題の非負値解の一意性が成り立つための最適な十分条件を与えることにより、熱方程式の非負値解の構造を解明した。この結果は、村田實等により確立された一般的な放物型偏微分方程式の非負値解の構造定理を球対称リーマン多様体上の熱方程式に応用したものである。また、村田實は土田哲生とともに、1次元ユークリッド空間上の摂動項を持った周期係数2階楕円型微分作用素のレゾルベントのスペクトルの下端でのスペクトルパラメーターに関する漸近展開と付随する放物型方程式の基本解の時間変数が無限大での漸近展開公式を与えた。この結果は、村田實の1985年の結果の1次元の場合を一般化・改良したものである。 内山耕平は2次元ランダムウォークの一点への到達時刻の分布の精密な評価を求めた。この評価は2次元ブラウン運動の円板への到達時刻の分布の密度関数の評価との比較により,正方格子の一点に自然に対応する平面円板の半径を確定する公式を与える。志賀啓成は古典的なCauchy積分の境界挙動を研究し、その境界値と境界関数を定義する特異積分の連続度に関して新しい知見を得た。また、リーマン面のモジュライ空間の1点の単射半径をその点を表すリーマン面の双曲構造を用いて下から評価することに成功した。宮本安人は円板領域上のフェーズフィールドモデルに現れる変分問題の安定解の形状が,領域を二つに分割するパターンのみであることを証明し、解の大域的分岐構造を研究した。また、回転対称領域におけるディリクレ問題とノイマン問題の対称解からなる枝から分岐する対称性破壊分岐を研究した。さらに,ギーラー・マインハルト系の境界にピークがある初期値に対して、境界の曲率が小さくなる方向にピークが移動することを証明した。
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