研究概要 |
複素多様体Mに対して,Aut(M)をコンパクト開位相を入れたMの正則自己同型全体のなす位相群とする.このとき,研究代表者児玉と研究分担者清水は,正則自己同型群Aut(M)の位相群としての構造から複素多様体構造が決定されるかどうかという基本的な問題を研究し,2008年にMichigan Math.J.にn次元単位多重円板Δ^nの特徴付けを与える次の結果を印刷公表した: 定理1.Mをn次元連結スタイン多様体とする.このとき,もしもAut(M)がAut(Δ^n)と位相群として同型であるならば,MはΔ^nに双正則同値である. なお,この定理の証明には,我々が従来とってきたリー群のテクニックは全く使えず,小林双曲型多様体に関する基本的な結果を用いた,より微分幾何学的手法が採用された. 平成21年度の研究実績として,研究代表者児玉と研究分担者清水はこの定理1を更に発展拡張した次の興味ある結果を得,学術論文として印刷公表されることが決まった: 定理2.Mをn次元連結スタイン多様体とする.このとき,もしもAut(M)の位相部分群GでAut(Δ^n)と位相群として同型であるものが存在するならば,MはΔ^nに双正則同値である. 定理3.Mをn次元連結複素多様体Mとし,DをC^n内の有界対称領域とする.Aut(M)の位相部分群Gで次の条件を満たすものが存在すると仮定する: (1)Mの各点でのGの固定部分群はコンパクトである. (2)GはAut(D)の単位元を含む連結成分と位相群として同型である. このとき,MはDに双正則同値である. なお、定理3はA.V.Isaevの論文(J.Geom.Anal.18(2008), 795-799)の自然な拡張にもなっている.
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