研究概要 |
平成22年度における研究実績は,エルミート展開とラゲール展開に関するハーディの不等式の研究である.これは,古典的なハーディの不等式を,エルミート展開とラゲール展開に対して,以前考察したものの再研究である.古典的なハーディの不等式とは,実バーディ空間に属する関数のフーリエ級数展開を考えたとき,第n番目のフーリエ係数の絶対値を|n|+1で除したものを,すべてのnに渡って総和したものが収束し,その和は元の関数の実ハーディ空間のノルムで押さえられるというものである.古典的な場合は,実バーディ空間より広い可積分関数の空間では成り立たない.ところが,今回の再研究によって,エルミート展開とラゲール展開に対しては,可積分関数の空間に関して成り立つという注目すべき結果が得られた.この成果はJ.Math.Soc.Japanにおいて掲載が決定している. もう一つの研究成果は,一般メーラー変換に関して,ほぼ良い形のハーディの不等式を得たことである.一般メーラー変換は,連結な非コンパクト半単純リー群で有限な中心を持つものの球関数展開(ヤコビ変換)のある場合を含むものである.得られた結果は,PolandのBedlewoのバナッハセンターで共同研究者佐藤邦夫が発表した.一般メーラー変換を定めるルジャンドル関数の漸近挙動は複雑なものであり,ごれが我々の得たハーディの不等式を予想される最良の形にはしていない.これを,最終結果にすることと,さらに進んでヤコビ変換に関するハーディの不等式を得ることが今後の課題の一つである.
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