非線形発展方程式論、特に時間依存劣微分発展方程式の理論と方法を応用して変分不等式の問題について研究した。 本年度発表した論文における研究内容は下記の通りである。 (1)一様凸双対空間における変分不等式の研究を行い、時間依存制約条件下の解の存在・一意性・正則性に関して抽象的理論を構築することに成功した。従来の抽象理論ではヒルベルト空間における枠組みもしくは時間に依存しない制約条件下の問題を扱うことしかできなかったが、本研究成果によってLpにおける時間依存制約条件下の変分不等式に関してLp正則性を一般的に導くことが可能となった。この成果は1970年代におけるH.Brezis(Lp理論)の研究と剣持、山田等によるヒルベルト空間における抽象理論(時間依存制約条件の問題)を統合したものといえる。用いた方法論はヒルベルト空間における理論にBrezis-Stampacchiaによる楕円型のLp理論の方法を組み合わせることである。具体的問題に応用する際には放物型偏微分方程式のLp正則性の結果を応用することにおいてBrezisやBrezis-Stammpacchia等による古典的結果の自然な延長であるといえる。 (2)熱水力学における変分不等式問題の大域アトラクターの構成を行った。扱った問題は熱方程式とNavier-Stokes方程式の連立系に温度に関して時間依存両側制約条件を課した変分不等式である。時間依存制約条件に関する微分の連鎖律の公式を用いることで解のエネルギー不等式を導き、大域アトラクターの構成が可能となった。
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