研究概要 |
本研究では多項式と超越整関数,両者の力学系的性質を個別に研究すると同時に,双方向的研究,即ち多項式の力学系の結果から超越整関数の力学系の結果を得ること,更にはその逆に,超越整関数に関する結果から多項式に関する結果を導くことを目指している.連携研究者(宍倉,稲生,中根,諸澤)の協力の下,本年度得た主な成果は次のとおりである: (I):超越整関数の力学系について: ・「特異有限型」と呼ばれる超越整関数については,semihyperbolicityの定義に出てくる定数Nがジュリア集合上の点によらずに一様な定数としてとれことがわかった. ・「構造有限型」という「特異有限型」に含まれる特殊なクラスの超越整関数について,Siegel円板が存在すれば,その境界には漸近値が必ず存在することがわかった. (II):多項式の力学系の研究とその超越整関数の力学系への応用,またその逆(双方向的研究)について「近放物型不動点のくりこみ理論」の応用の1つとして,Siegel円板またはCremer点をもつ2次多項式のジュリア集合の位相的構造の詳細な表示を与えた.特にCremer点をもつ2次多項式のジュリア集合は正確な図をコンピューターで描くのは不可能であるため,実際にどのような「形」をしているのかは今まで未知であった. ・「双曲型である多項式のジュリア集合が連結であるならば局所連結になる」という結果の別証明(path connectedであることを直接示す)を与えた. ・2次多項式のときにDouady-Hubbardによって考えられていたstraightening mapという概念を3次以上の一般のd-次多項式の場合に考え,それがdisjoint typeでない限り不連続になることを示した.
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