研究概要 |
ユークリッド空間上で実2次形式のポテンシャルをもつシュレディンガー方程式に摂動ポテンシャル(これを副主表象とみなす)を加えたものを考え,シュレディンガー作用素の主要部が非等方的な振動子を含む場合に,同じ初期値を持つ自由シュレディンガー方程式の解と比べて摂動方程式の解は,同時刻で特異性がどのように変化しているのか研究した.解の特異性としてはソボレフ空間のオーダーの場合が最も基本的であり,これにまず取り組み,以下のようなことまでわかった. 摂動ポテンシャルが高々1次の増大度を持つ場合を考える.摂動方程式の解は自由方程式の解と比べて,強い特異性は古典的な伝播法則をみたす(つまり同時刻での解の特異性の変化は,主表象・副主表象から決まるある種の陪特性曲線に沿う伝播として記述できる)が,弱い特異性は古典的な伝播法則を必ずしもみたさない.弱い特異性を方向ごとに超局所化して考えると,古典的な伝播法則をみたさない方向は特殊な方向に限られる.さらにこの特殊な方向での弱い特異性を考えると,摂動に対する"適当な一般性の仮定"の下,主表象から決まる特定時刻Tをふくむ十分短い時間区間を選ぶと,"適当な初期値のクラス"に対して,時刻Tまでは弱い特異性に対しても古典的な伝播法則が成り立つが,時刻Tに摂動解に"新たな弱い特異性"が生じ,時刻T以降,この新たな弱い特異性を古典的な伝播法則にしたがって移した集合上で摂動解は特異である.なお長時間で考えると異なる時刻で生じた特異性が相殺する可能性がある.
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