研究概要 |
本研究では、線形分散型方程式の解の超局所構造・大域構造を方程式の主表象およびより低次の表象の幾何との関連から解明することを大きな目標とした。まず前年度からの継続として、ユークリッド空間上で実2次形式のポテンシャルをもつシュレディンガー方程式に摂動ポテンシャルを加えたものを考え、シュレディンガー作用素の主要部が共鳴振動する振動子を含む場合に、副主表象による解の特異性の伝播・弱い特異性の生成・およびそれらの相互作用が起こる機構を研究した。そしてポテンシャルが減少する場合に弱い特異性の主要部を抽出することができ、一般の場合は課題として残った。次に完備リーマン多様体上でシュレディンガー方程式を考え,測地流により捕捉された軌道の周辺での解の特異性の構造を解析した。測地流が周期的な場合、解の波面集合と余接空間で交差するような閉測地軌道同士の全時刻にわたる伝播法則を記述することは容易にできたが、閉周期軌道上での特異性の位置の特定については課題として残った。(これに関し、筧氏(岡山大)と西山氏(阪大)により最近大きな進展があったことを付記しておく。)最後にシュレディンガー方程式の測地流の幾何と解の大域構造との関連を研究するためのモデルとして、ユークリッド空間上での平坦な波動方程式に、空間的にコンパクトで時間的には全時刻に渡る計量に関する摂動を加え、解作用素のノルムが時刻無限大で任意の増大オーダーになるようにできるかどうか研究し、増加オーダーが多項式オーダーまたは劣指数オーダーの場合に肯定的な例を構成した(西谷・上田氏との共同研究)。平成22年9月に大阪大学の他の研究者と協力し、当該研究分野と関連の深い国内外の研究者を招聘して国際研究集会を大阪大学で開催した。
|