研究概要 |
分散型方程式は、KdV方程式、シュレディンガー方程式、薄板の方程式などに代表される偏微分方程式の重要なクラスである。本研究の大きな目的は、線形分散型方程式の解の超局所構造・大域構造を方程式の主表象およびより低次の表象の幾何との関連から解明することである。今年度は解の特異性の解析, 特に基本解の特異性の解析に重点を置いて研究した。より詳しくは、ユークリッド空間上で実2次形式のポテンシャルをもつシュレディンガー方程式に対して、任意のコンパクト台の滑らかなポテンシャル摂動を加えても同じ初期値に対する解の波面集合が不変であるための(実2次形式に関する)必要十分条件を求めた。さらにその条件の下では、1次的に増大するポテンシャル摂動を加えた場合、同じ初期値に対する解の波面集合の間には古典的な特異性の伝播法則が成り立つことを確かめた。一方、同じタイプのシュレディンガー方程式に対して、任意のコンパクト台の滑らかなポテンシャル摂動を加えても基本解の波面集合が不変であるための必要十分条件は、上の条件より真に弱いものであることを発見した。さらにその条件の下では1次的に増大するポテンシャル摂動を加えた場合、基本解の波面集合の間に特異性の伝播法則が成り立つことを確かめた。これらをより一般の分散型方程式に拡張するのは今後の課題である。大阪大学の他の研究者と協力し、平成23年11月2日~11月4日および平成24年10月31日~11月2日に当該研究分野と関連の深い研究者を招聘して大津で2回研究集会を開催した。
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