研究概要 |
1.非斉次境界条件下の定常的Navier-Stokes方程式の境界値問題の存在定理を示す際に重要な役割を果たす「Lerayの不等式」の成立条件に関して,次の点を明らかにした:2次元2重連結領域においては,「Lerayの不等式」が成立するための必要十分条件は「強い意味でのflux条件」である. 上記主張の「必要性」の部分の証明は,背理法を用いた「Lerayの不等式」の成立条件の書き直しと,HeywoodによるU-tubeテスト流の構成法を組み合わせることにより為される. この主張を,より一般の2次元多重連結領域へ拡張することが出来れば,領域に対する既存の幾何的制限を全て取り除くことが可能となる. 2.ベクトル場の分解定理を示す際,我々はDirichlet積分に対応する2次形式のcoercivenessをある変分不等式に置き換えるという観点を本質的に用いたが,これを抽象的に再設定し直すことにより,Lax-Milgramの定理の大域的一般化を示すことができた. この一般化により,1)外部領域におけるストークス問題の可解性,2)3次元有界領域におけるL^r-Helmholtz-Weyl分解定理,3)境界付きコンパクトRiemann多様体上のL^r-de Rham-Hodge-Kodaira分解定理,を統一的に示すことができる.
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