研究概要 |
1.一般境界条件を満たす境界データを領域内にソレノイダルなベクトル場として拡張できることは,既に良く知られている.我々は,有界領域上のHodge分解定理を用いることにより,拡張されたソレノイダルなベクトル場が,実は調和ベクトル場とベクトルポテンシャルの回転の和で表示できることに気付き,この事実を使って非斉次境界条件下での定常的Navier-Stokes方程式の解の存在定理を示すことが出来た(平成21年度).本年度は,この方法を定常的MHD(磁気流体力学)方程式に適用することにより,速度場と磁場に非斉次境界条件を課したときの,解の存在に関する一結果を得た.この結果において,一般境界条件を満足する速度場と磁場の境界データに対しては,磁場境界データには何ら制限を課すことなく定常解の存在が示せることが明らかになった.これは,速度場に対しては,そのソレノイダル拡張の調和ベクトル場への射影像が(粘性係数と磁場抵抗係数に比べて)小さい等の制限が必要であったことと比較すると,MHD方程式の1つの特徴を示していると考える. 2.非斉次境界条件下のNavier-Stokes方程式の弱解に自然に関連する弱形式のcoercive性を保証する不等式について,以下の考察を進めた.(1)Lerayの不等式が成立する為の必要条件を,Dirichlet境界条件を満足する定常的非圧縮Euler方程式の解(特にその圧力の各境界成分上の値)に関する条件として書き下した.(2)3次元有界領域に軸対称性や面対称性等の対称性を課した下で,同じ対称性を課したソレノイダルベクトル場に対するLerayの不等式の成立について検討した.
|