研究概要 |
f(t)が実軸上の区間Iで定義された連続関数であるとき、Iにスペクトルを持っすべての有界自己共役作用素(あるいは行列)Xに対してf(X)が定義できる。この作用素関数X→f(X)を解析し、多項式、特に直交多項式の研究に新方向を資することがこの研究の目的である。 自己共役作用素の空間に行列(作用素)順序を導入し、作用素関数X→f(X)が行列(作用素)順序を保存するときfはI上の作用素単調(増加)関数、X→f(X)が凸であるときfはI上の作用素凸関数と呼ばれる。 fがI上の作用素単調(増加)関数であるときその原始関数は作用素凸関数であり、gが(0,∞)で作用素凸関数であるとき、g'(t)は作用素単調とは限らないが、g'(t^<1/2>)は作用素単調であることを示した。このことは実数値関数の単調増加関数と凸関数の関係と同じような関係が成立することを示している。しかし、全く異なる関係として次の定理が知られていた: (0,∞)で定義された非負の関数f(t)が作用素単調であるための必要十分条件はf(t)が作用素凹関数である。この定理の条件であるfの非負性を除き次のように拡張した: 「f(t)が作用素単調であるための必要十分条件はf(t)ぶ作用素凹関数でf(∞)>-∞を満たすことある」。さらに、二つの単調関数h, gについて K_<h,g>(t,s) : =(h(t)-h(s))/(g(t)-g(s)) を積分核とする積分作用素が正定値であるための必要十分条件は、行列X, Yについて g(X)≦g(Y)⇒h(X)≦h(Y) が成立することであることを示した。 以上の結果を含む論文はProceeding of Amer. Math. Socに受理された。また、この結果について京都大学数理解析研究所における研究集会で講演した。
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