研究概要 |
数学による社会現象や自然現象の解析には,その現象に対応する微分方程式や偏微分方程式を利用することが多く,物理学や工学における実験やその検証のための評価に利用されていて,数学方面には数学的な道具の開発や理論の構築が求められている。そこで,本研究では,物理学における波動現象を記述する波動方程式やプラズマ現象等を記述するVlasov-Poisson-Fokker-Planck systemやVlasov-Poisson systemに関連する数学方面からの研究を行った。本研究期間内における主な成果は,線形の摩擦項や強い摩擦項を持つキルヒホッフタイプの準線形退化型波動方程式の解構造の研究や減衰の状態を示す減衰評価式を与えることができたことである。同時に,との結果を得るために必要となる初期値と波動係数のサイズに関する詳しい関係式も与えることができた。また,線形の摩擦項を持つ一般化されたキルヒホッフタイプの準線形退化型波動方程式に対しても時間に関する大域解の一意存在定理および解の漸近挙動に関する成果を得ることができた。非線形項である積分項の指数が一般化されているため解のラプラシアンの項の評価式を得る必要があったが,その解析では新しいタイプの恒等式を利用することにより解決できた。さらに,連立方程式の場合にもこれらの結果を拡張し,単独方程式の場合と類似の結果を導くことができた。一方,線形消散型波動方程式の研究では,部分領域におけるエネルギー減衰評価式の新しい関係式を導くことができた。これらの研究は非線形偏微分方程式の時間大域解の漸近挙動に関連している点で研究の目的に沿ったものになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,自然現象や社会現象に関連の深い偏微分方程式の解構造の数学方面からの解析であり,おおむね研究計画に沿って研究を進めていて,その成果とし査読付き論文の掲載を行うことができている。また,研究成果の一部については日本数学会四国例会において研究発表をすることにより,多くの研究者と研究成果の共有ができている。上記のことからも現在までの研究達成度はおおむね順調であると判断できる。
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