研究課題/領域番号 |
21540186
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小野 公輔 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (00263806)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 準線形退化型波動方程式 |
研究概要 |
自然現象や社会現象の数学による解析には,その現象に対応する関数微分方程式や非線形偏微分方程式を利用することが多く,物理学や工学における実験やその検証のための評価に利用されていて,数学方面には数学的な道具の開発や理論の構築が求められている。そこで,本研究では,物理学における波動現象を記述する消散型波動方程式やプラズマ現象等を記述するVlasov-Poisson-Fokker-Planck system やVlasov-Poisson system に関連する数学方面からの研究を行った。本研究期間内における主な成果は,消散項と自己相互作用に関連する非線形項を持つキルヒホッフタイプの準線形退化型波動方程式の解構造の研究や減衰の状態を示す減衰評価式を与えることができたことである。同時に,この結果を得るために必要となる初期値の属する関数空間とノルムの大きさに関する詳しい関係式も与えることができた。これまで扱うことのできなかった弦の張力に関連する非線形項の指数が1より小さい場合であっても自己相互作用に関連する非線形項を処理できることを示している。特に,この研究では新しいタイプの恒等式を導き利用することにより解のH^2ノルムの上から減衰評価式を導いた点が重要な役割を果たしている。さらに,広い範囲の非線形項にも同様の結果を導き改良していく必要があり,類似の恒等式の研究を進めている。また,空間次元を一般化していくことも今後の課題といえる。これらの研究は非線形偏微分方程式の時間大域解の漸近挙動に関連している点で研究の目的に沿ったものになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,自然現象や社会現象に関連の深い偏微分方程式の解構造の数学方面からの解析であり,おおむね研究計画に沿って研究を進めていて,その成果とし論文の掲載(雑誌:Journal of Mathematics, The University of Tokushima Vol.46)を行うことができた。また,今回の研究実績報告には間に合わなかったが並行して研究を進めている研究成果の中には現在投稿中の論文もいくつかあり,投稿先雑誌のレフェリーとのやり取りを続けている状況のものや,レフェリーの修正要求に答えるために研究を継続しておこなっている事案もある。これらについては今後も継続して研究を進めていく必要があり,今後の成果報告に繋げていきたいと考えている。また,研究成果の一部については日本数学会四国例会(高知大学)において研究発表をおこなった。研究成果発表をおこなうことにより,参加している研究者との研究討議を行うだけでなく,研究成果の共有をおこうことができた。上記のことからも現在までの研究達成度はおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究はおおむね順調に進んでいるので,これからも研究計画に沿ったかたちで研究を推進している方針である。特に,連立方程式の場合に得られた研究結果をさらに一般化された非線形項を持つ場合に拡張し,新しい成果へつなげていく予定である。一方,様々な現象に関連する線形および非線形偏微分方程式に関する研究には,楕円型方程式,放物型方程式,および,双曲型方程式等の様々な偏微分方程式と密接な関係があり,これらの偏微分方程式の研究を行っている研究者との研究討論および情報の交換等は研究を進めて行く上で必要不可欠のものである。そのためにも,学会だけではなく各地で開催されている研究集会等にも積極的に参加し,研究成果の発表を行ったり,他大学の研究者との交流を深めたりして研究に役立てる。一方,大学内の雑誌あるいは資料といった研究を進めている上で,必要なものが不足しているので,他大学あるいは研究所等へ情報収集および資料収集にでかける。パソコンの普及により,パソコンソフトによる偏微分方程式の解の漸近挙動に関する数値解析や数値シミュレーションおよびグラフ表示による解析が重要な役割を果たすようになってきたので,本研究でもパソコンを活用し,研究の有力な道具の一つとして役立ていくために,パソコン上で動く計算支援ソフトを継続的に購入する。
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