フランス・ボルドー大学のJean-Francois Bony、パリ南大学のThierry Ramond、パリ北大学のMaher Zerzeriとの共同研究により、ハミルトン系の双曲型不動点の近傍における超局所解の伝播についての研究(当研究課題による)の応用として、ホモクリニック軌道が生成するレゾナンスの虚部の下からの評価を得た。不動点が非等方的であるか、あるいは不動点に付随する安定多様体と不安定多様体の接空間がホモクリニック軌道上で一致しないならば、レゾナンスの虚部は準古典パラメータhの定数倍以上であることを示した。上の条件が満たされない場合については、レゾナンスの虚部はh/log hの定数倍であることも予想しており、この証明は次年度の課題である。 その他、ボローニャ大学のAndre Martinez、立命館大学の渡部拓也と、連立のシュレディンガー方程式のエネルギー交差による遷移問題、またパリ北大学のMouez Dimassiと、シュタルク効果を持つシュレディンガー作用素の摂動が定義するスペクトルシフト関数の漸近公式について共同研究を始めた。特に後者については、弱い意味(超関数の意味)での漸近公式と、非捕捉条件の下で強い意味(各点収束の意味)での漸近公式を求めることに既に成功し、現在論文執筆中である。 10月には立命館大学に準古典解析の専門家5人をフランスから招いて、小スクール"Lectures on Semi-Classical Analysis"を開催した。学生、研究者等50人以上が参加し、磁場付きシュレディンガー方程式、トレース公式、レゾナンス、フォッカー・プランク方程式、非線形シュレディンガー方程式などについての講義を受け、活発な議論をした。この講義の報告集を現在作成中である。
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