1.いくつかのn変数多項式と、n次元アフィン空間の点が指定されたとき、局所ベルンステイン-佐藤イデアルと呼ばれるn変数多項式環のイデアルが定義される。このイデアルは、ある強い条件を満たせば単項イデアルとなることが知られているが、その条件を満たさない場合には一般には単項イデアルにはならない。実際BrianconとMaynadierは、ベルンステイン-佐藤イデアルが単項イデアルにならない例を発見したが、具体的な生成系を決定するには至らなかった。そこで、Bahloulとの共同研究において、まず局所ベルンステイン-佐藤イデアルを計算するアルゴリズムを構成し、それを神戸大学の野呂により開発された数式処理システムRisa/Asirに実装することにより、ベルンステイン-佐藤イデアルが単項イデアルにならない例を複数個構成し、Briancon-Maynadierの例も含め生成系を具体的に決定した。 2.いくつかの実係数の多項式による不等式で定義されるような領域上のホロノミック関数の積分の満たすホロノミック系を計算するアルゴリズムを見出した。ホロノミック関数とは、ホロノミック系と呼ばれる解空間の次元が有限となるような連立線形偏微分方程式を満たす関数のことである。このとき上記のような積分もホロノミックになることはベルンステインにより証明されていたが、実際にそのホロノミック系を計算するアルゴリズムは知られていなかった。
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