研究課題/領域番号 |
21540200
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
大阿久 俊則 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60152039)
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キーワード | 代数解析学 / アルゴリズム / D加群 / ホロノミック関数 / 微分差分方程式 / 超関数 / 局所コホモロジー / 留数 |
研究概要 |
1.ホロノミック関数(ホロノミックな線形微分方程系を満たす関数)を多項式不等式で定義される領域上で一部の変数について積分することを考える。この積分の満たすホロノミックな微分方程式系を導出するアルゴリズムを構成した。そのためにヘビサイド関数を用いる。ヘビサイド関数の満たすホロノミック系は、大阿久・高山(1999年)による複数の多項式のべき乗の積が満たすホロノミック系の計算アルゴリズムで求められることをまず示した。次に被積分関数とヘビサイド関数の積の満たすホロノミック系を計算する必要がある。このための一つの方法は、それぞれの満たすホロノミック系のD加群の意味でのテンソル積を大阿久・高山(2001年)の方法で求めることであるが、一般に計算量が著しく大きくなる。そこで、微分作用素のある種の代入を用いる方法で、この積の満たすホロノミック系を効率的に計算できることを示した。最後に大阿久・高山(1999年)による積分アルゴリズムを用いて目的の結果を得る。さらに、被積分関数が、パラメータも含めてホロノミックな微分差分方程式を満たす場合に、上記の積分の満たすホロノミックな微分差分方程式系を導出するアルゴリズムも導いた。 2.多項式の複素数べきで定義される超関数の極におけるローラン級数の係数の満たすホロノミック系を計算するアルゴリズムを構成した。 3.多項式の対数の自然数乗の満たすホロノミック系を正確に計算するアルゴリズムを構成した。 4.超平面の局所コホモロジー類に付随した超関数の満たすホロノミック系と局所コホモロジーの満たすホロノミック系について、包含関係が成立するための十分条件を見出した。このためにはD加群のアルゴリズムによる計算実験が有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で予定した当該年度の研究目標はすべて達成され、特に積分のアルゴリズムについては、従来よりも効率的なアルゴリズムが得られ、その正当性が証明できた。さらに本研究で開発したアルゴリズムを用いた計算実験によって予想をした定理を証明することができた。以上の成果を3篇の単著論文としてまとめて、投稿した。そのうちの1篇は2名の査読者による審査の結果、新規かつ重要な研究と認められて受理され印刷中である。 その他の2篇は現在審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本研究は順調に遂行されており、本研究課題に関して既に3篇の論文を執筆、投稿した。研究発表については、今までは論文執筆の他は国内の研究集会での発表が主であったが、今後は海外の研究集会にも積極的に参加し、研究発表や関連研究者との研究連絡を行い、その結果必要があれば、研究計画の見直しを行いたい。
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