本研究の目標は、超離散系として記述できるセルオートマトンの解を系統的に考察するための手法を打ち立てることである。特に、超離散可積分系を付随のDarboux変換とともに構成するための手法を打ち立て、その手法によって超離散可積分系の厳密解を生成すること、及び超離散可積分系に対応するYang-Baxter写像(Yang-Baxter方程式の集合論的な解)の代数的な構造を解明し、そのYang-Baxter写像の対称構造と幾何crystal理論を結びつけることを目的とする。また、超離散系に厳密解として記述できない現象が現れる場合、その現象と普段に離散系や連続系における現象との相違点をコンピュータ・シミュレーションによって明確にする予定である。 本年度は、このプログラムに関して以下の具体的な研究成果を得た。 1.平成22年度に整数上の初期値問題に関して得られた結果を拡張し、可積分なせルオートマトンのプロトタイプである超離散KdV方程式の実数全体における初期値問題を解くことに成功した。更に、考案した解法を用いて、超離散KdV方程式の一般解の漸近的挙動を解明した。この研究成果を発表する論文は現在投稿中である。 2.広田・Mickensと呼ばれている離散化手法に基づき、Painleve IとPainleve IIという有名な常微分方程式の直接の離散化を行い、既知の離散Painleve方程式以外にも、E_8^{(1)}型アフィンWeyl群の対称性を持つ可積分な写像と関係する新しい離散Painleve方程式が得られた。更に、いくつかの新しい「Gambier型」という線形化可能な離散可積分系も得た。
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