研究課題
複素多様体Mの上の正則写像からなる、写像の合成を積とする半群の、Mへの作用を考える。特に、Mがリーマン球面の場合の上記の半群を有理半群とよぶ。さらに、生成系を固定したとき、各生成元をある確率で選択するシステムを考えることによって、ランダムな複素力学系を考える。また、有理半群のジュリア集合はある種の自己相似性を持ち、フラクタル幾何学と深く関係する。このようにして、有理半群の力学系とランダムな複素力学系に付随する様々な数学的対象を、力学系理論・複素解析学・フラクタル幾何学・エルゴード理論・確率過程論などの多くの分野に関係させながら、多角的な理論を構築することが研究の主な目的である。ランダムな複素力学系では多くの場合に複数の写像の協力によりカオスが消滅すること(協調原理とよぶ)を発見したが、数学を含む自然科学一般でのカオスの意味などを問いながら、新しい自然科学を構築することを目指した。核ジュリア集合が空になる有理半群と付随するランダムな複素力学系をともに調べた。ランダムな複素力学系での極限状態に現れる関数は、半群のジュリア集合の上だけで変化するような複素平面上の連続特異関数となることがある。この関数やその確率パラメータによる偏導関数の微分可能性などの特異性を詳しく調べた。またランダムな複素力学系における安定性や分岐を調べた。有理半群のジュリア集合のハウスドルフ次元についてアメリカのM.Urbanski氏と共同研究を行った。そして北大の物理学者である佐藤譲氏と雑音誘起現象の数理的記述について共同研究を行った。また大阪大学のポスドクであるJ.Jaerisch氏と無限生成拡大的有理半群の力学系について共同研究を行った。ドイツ(8月、1月、いずれも招待講演)や京大、北大などでの様々な研究集会にて研究成果を発表し他の研究者と活発な意見交換を行った。また4本の学術論文を出版した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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