本研究では、複素領域における線型常微分・差分方程式のモノドロミをパンルヴェ方程式の解析を用いて決定することを目標とした。本年度め研究テーマとして、とくにq-差分方程式の接続問題を主テーマに掲げた。本年度は、q-第1パンルヴェ方程式において、qの絶対値が1の時には、無限遠でのべき展開が収束する解が存在すること、さらに、qが1のべき根の場合は、特殊解が超幾何函数で表示されることを示した。q-第1パンルヴェ方程式はqが一般の値の時は、すべての解が超越的(1階差分方程式の解には帰着されない)ことがわかっており、この解はq-第1パンルヴェ方程式で厳密に求められた特殊解の最初の例になっている。同様の解はほかのq-パンルヴェ方程式でも(計算は複雑になるが)構成することは可能であり、おもしろい役割りを果たすと期待される。この研究結果は、夏に英国ケンブリッジで開かれた研究で発表した。 本年度の後半では、モノドロミ非保存変形について研究した。何年かに一度、アルファン系の方程式を研究してきたが、今年度は不確定特異点を持つ場合のアルファン系の方程式が、モノドロミ非保存変形になることを示した。もともとのアルファン系が超幾何函数で解けるのに対して、退化系は同じように合流超幾何函数などで解ける。これらの方程式も、不確定特異点を持つ線型方程式のモノドロミ非保存変形として表される。この研究結果は、3月に仏国レンヌでの幾何解析セミナーにおいて発表した。
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