昨年度に引き続いて、q-パンルヴェ方程式の研究、特に特殊解の構成に力を注いだ。昨年度、第一q-パンルヴェ方程式に対して、qが1のべき根の場合について代数解を構成したが、今年は第二q-パンルヴェ方程式に対して同様の結果を出した(9月のギリシャ・ロードス島での研究会で発表して、そのプロシーディングに掲載ずみ)。この調子で先へ進んでも、さほど面白くはないと思っているが、将来的には漸近展開への布石になるであろうと予想している。 後半は方向を転じて、q-パンルヴェ方程式の超幾何解との関連を探るべく、超幾何型q-差分線型方程式の統一理論を展開した。q-特殊函数については、古典型の特殊函数と異なり、統一的な始点による研究が少ないため、とりあえずラプラス型について分類すると、基本超幾何函数の合流として7つのタイプがあることがわかった。古典的な場合だと5つだが、エアリーとベッセルに対応する場合がともに2つあるためである。q-エアリー函数が第三q-ベッセル函数の特殊化として得られることを示したこと、さらに、2つのq-エアリー函数がシェアリング変換で移り合うことは大きな発見であろう。さらに、修士1年の森田健君が接続問題を解いたことで、2つのq-エアリー函数の関係が完全に明らかになった。また、リーマン・スキームのq-類似の構成など、q-差分線型方程式を考察するうえでの基本的な道具立てを整備できた点も、今後の研究に役立つと思われる。 この分類によって、q-パンルヴェ方程式の超幾何解との関連も明確になり、本研究の大きなテーマの一つであった、q-パンルヴェ方程式に対するモノドロミ(正確には接続係数)可解な解への研究へ一歩を踏み出した。この研究結果は、2月に行われたストラスブールでの日仏研究会で発表した。
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