研究概要 |
本年度は、1.パンルヴェ方程式とカルタン幾何との関係2.パンルヴェ方程式の漸近解析の2点について調べた。 1.では、パンルヴェ方程式のパラメタがカルタンの射影微分幾何の不変量になることに注目して、特に特殊な形の2階の正規形微分方程式を座標変換して、第1パンルヴェ方程式になる条件などを求めた。この方法は、ガンビエの分類のある一部分を明示したものといえる。同様の手法によって、第1、第2,第4パンルヴェ方程式に関しては、カルタンの(擬)不変量とパンルヴェ方程式との対応関係が決定できると期待している。 2.においては、ここ20年来、混乱しているパンルヴェ方程式の漸近解析を徹底的に整理して、べき級数型の漸近解と楕円型の漸近解の各々について調べた。アブロビッツ・シーガー解など指数型の漸近展開もべき級数型の特殊ケースとして扱うことが出来る。特に、第5パンルヴェ方程式の楕円漸近解は、ブートルーはじめ先行する研究でも見過ごされていたが、初項だけは決定した。べき級数型については、すでに岩野の定理および80年代の高野・下村・吉田で収束が示されていたが、その後の研究の中で忘れ去られていたので、パンルヴェ方程式のべき級数型漸近解析のタイプを完全に分類することで、その収束がすべて高野・下村・吉田の結果に、ベックルント変換によって決定できることを示した。 本研究では、パンルヴェ方程式の漸近解析を主目的の一つに掲げたが、3年目の最後で将来につながる結果を出すことができた。カルタン幾何との変換論も、本研究の一つの方法論として考えていた微分ガロア理論につながるものと思われる。
|