比較的古くから組合せ論の研究対象であったランダム平面分割は、近年、超対称ゲージ理論の低エネルギー厳密解(サイバーグ・ウィッテン幾何)、グロモフ・ウィッテン不変量、ミラー対称性などとの関連が見出され、数理物理の新たな研究対象になっている。さらに、最近、可積分系とのつながりも見出されている。ランダム平面分割における可積分構造と幾何学的構造について、既に同定されている量子トーラス対称性などを用いて、そのさらなる理解と応用を現実的に追求することが、この研究の目的である。本年度は、5次元超対称U(N)ゲージ理論のネクラソフ分配関数、ならびにBPS条件を満たすウィルソン・ループ演算子の相関関数(ネクラソフ分配関数を拡張したものに相当)に対する外部ポテンシャルの導入により拡張したランダム平面分割を用いる導出と、ランダム平面分割の記述する無限格子の1次元戸田階層の特殊解の関係を、変形KP階層のN-簡約(ドリンフェルト・ソコロフ階層の一種)にもとづく可積分構造の視点から理解することを進めた。研究開始当初の予想とは異なる可能性が生じたので、その修正・収束を行っている。5次元超対称U(N)ゲージ理論の拡張されなサイバーグ・ウィッテン幾何を記述する熱力学的極限についても詳細を詰めている。この問題とも関係して、高崎は、フルビッツ数の場合にならって、ランダム平面分割の熱力学的極限を無分散戸田階層の解として記述した。現在、詳細を詰めて論文執筆の準備をしている。
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