本年度の目的は、主として常微分方程式論的アプローチにより、非線形楕円型方程式の固有値や固有関数の漸近的性質を詳細に解析することである。特に1つのパラメーターを含む問題の固有値に関する漸近展開の公式の確立に焦点を絞った。 (1)1つの固有値パラメーターを含む常微分方程式の固有値問題については、ロジスティック方程式の分岐曲線の局所的な挙動を詳しく調べた。これまでの研究では、分岐曲線の局所的な挙動については主要項から第3項程度の漸近展開公式しか得られていなかった。ロジスティック方程式はきれいな分岐構造をもつモデル方程式としてよく知られているが、一方では生物の個体密度を表す生物学的背景を持つ重要な方程式である。このような方程式の局所的分岐構造をを考察することは重要である。これに関して、常微分方程式論的アプローチにより漸近展開の公式を確立することに成功した。この手法は、1次元のシュレディンガー方程式の定常解の局所的分岐構造に関する詳細な漸近展開公式の確立に応用可能である。 (2)単振り子の方程式が摩擦項を反映した非線形項をふくむような、物理学的背景を持つ方程式の解析は重要な研究課題である。これに関して、常微分方程式論的アプローチにより詳細な漸近挙動の公式を確立することに成功した。このことにより、摩擦項を含む単振子の方程式の解と、理想的状態における単振子の方程式の解の漸近挙動の違いを明らかにすることができた。
|