研究課題/領域番号 |
21540219
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴田 徹太郎 広島大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90216010)
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キーワード | 関数方程式論 / 固有値 / 漸近解析 / 変分法 / 逆問題 |
研究概要 |
本年度の目的は、常微分方程式論的アプローチと変分法により、非線形楕円型方程式の固有値や固有関数の漸近的性質を詳細に解析すること、またそこから派生する逆問題を考察することである。特に1つまたは2つのパラメーターを含む問題の固有値に関する漸近展開の公式の確立と逆問題に焦点を絞った。 (1)1つの固有値パラメーターを含む常微分方程式の固有値問題については、ロジスティックタイプの方程式の分岐曲線の逆問題を考察した。これまで逆分岐問題については先行研究が少なく、非線形項が有界な場合にのみ研究が行われてきた。ロジスティック方程式はきれいな分岐構造をもつモデル方程式としてよく知られているが、この方程式を逆問題の関連から考察することは、生物の個体密度とすみやすさの関係を解明するという観点から重要な問題である。これに関して、常微分方程式論的アプローチと漸近展開の公式を援用することにより、分岐曲線の漸近的性質から、未知の非線形項を決定することに成功した。 (2)2つの固有値パラメーターを含む常微分方程式の固有値問題については、線形固有値問題との関連で、ロジスティック方程式と関連する非線形項をふくむような、生物学的背景を持つ方程式の解析が重要な研究課題である。これに関して、昨年度のわれわれの研究成果の1つである、1つのパラメーターを含む問題の分岐曲線の局所的構造の詳細な漸近解析を応用することにより、2つのパラメーターどうしの漸近的関係を与える公式を確立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つの固有値パラメーターを含む常微分方程式の固有値問題について、これまでのわれわれの研究で得られてきた順問題に関する成果が逆問題に関して応用可能であることが判明したため、当初の予定よりも詳しい逆問題の研究に関する成果が挙げられた。具体的には$L-p$空間の枠組みで逆問題を考察していくことが有効であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
1つまたは2つのパラメーターを含む常微分方程式の固有値に関する漸近展開の公式の確立と逆問題について得られた成果を、多次元の場合や、摩擦項を含む場合に拡張していくことが大きな課題となっている。また、逆問題に関し、一意性や安定性は成り立つかという基本的な課題を考察することも重要課題である。これらの研究を遂行する上では、適切な形で変分法を援用すること、また新たな常微分方程式論的テクニックを開発することが重要なアプローチになってくる。
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