研究概要 |
本年度はKPII方程式のlinesolitonの安定性の研究および1次元Benney-Luke方程式のソリトン解の安定性(Pego氏とQuintero氏との共同研究)を行った.KP-II方程式は浅い水面上の長波長の波を記述する非線形偏微分方程式で,一方向に長波長の波を記述するKdV方程式に波の進行方向と垂直な向き(y-方向)への緩やかな変化を取り入れたモデル方程式であり,特に表面張力が比較的弱い場合を記述する. Benney-Luke方程式は2次元の水面波の方程式の長波長近似の一つであり,KdV方程式は,同一方向に進む長波長波の運動を記述するのに対し,Benney-Luke方程式は左右異なる方向に進む波がまだ分離していない状況も記述するが,特に表面張力が弱い状況に相当するケースを研究した.どちらの方程式もハミルトニアン系であり,孤立波は共役運動量を拘束条件とするハミルトニアンの鞍点であるため,Grillakis-Shatah-Straussの理論は適用できない. 昨年度はKP-II方程式のline-soliton解はy-方向に周期的な擾乱に対して示したが, この場合は,1次元モデルのKdV方程式のソリトン解と同様に擾乱の一部はソリトン解の振幅および位相の変化として吸収される.しかし2次元平面全体でKP-II方程式を考えた場合,line-solitonの振幅や位相はy-方向に一様ではなく局所的に現れる.本年度の研究では,line-sohtonにおけるKP-IIの線形化作用素のレゾナントモードを決定し,線形化方程式の解の減衰評価を求めた.またレゾナンスの影響でline-solitonの形状が変化する様子を記述する非線形diffusionwave方程式を求めたが,このdifussionwaveの方程式から,KP-II方程式のline-soliton解の安定性を少なくとも形式的には説明できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究目標であったKP-II方程式のlinesoliton解の一般の局所化された擾乱に対する安定性は,前年度におこなったy-方向に周期性を仮定する場合とメカニズムが大きく異なることがわかり,年度当初の方針ではうまく研究が進まなかったが,別のアプローチが見つかり,現在その方向で研究を推進中である.
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