研究概要 |
水の波の一つである津波は,主として海底地震による水底の変形によって引き起こされる水面の変形が重力を復元力として水面上を伝播する波であり,水深と比較して波長が非常に長い波として特徴付けられる.そのような波の伝播は,水の波の基礎方程式系の浅水波極限によって導出される,浅水波方程式と呼ばれる偏微分方程式によって近似的に記述されることが知られている.さらに,津波の伝播をシミュレートする際には,通常,水面の初期変位が海底地震による水底の永久変位に等しく,初期速度はいたるところ零であるという初期条件の下で,浅水波方程式が数値的に解かれている.昨年度までの研究で,この津波の生成に関するモデルの数学的に厳密な正当性を与えることに成功している. 一方,比較的揺れが小さい地震なのに大きな津波を引き起こす海底地震として「ぬるぬる地震」あるいは「津波地震」と呼ばれている地震がある.このような地震が起きる一つの要因として,海底の比較的ゆっくりとした地殻変動が挙げられており,上記の津波生成のモデルではその現象は上手く説明できていない.平成22年度は,このような「ぬるぬる地震」による津波のモデルを,海底地震による水底の変形過程が既知であるという仮定の下で数学的に厳密に解析し,零初期条件の下で外力付きの浅水波方程式で近似できることを示した.さらに,海底地震による影響が高次近似方程式であるGreen-Nagdhi方程式にどのように反映されるかを調べた.
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