研究概要 |
数理生態学の棲み分け現象や外来生物の侵入をモデル化した反応拡散方程式を研究した。棲み分け現象を定式化した問題はu_t=△[(1+αv)u]+u(a-u-cv),vーt=△[(1+βu)v]+v(b-u-cv)の形の非線形拡散を伴う反応拡散方程式系として記述される。重要な問題は,正値定常解集合の構造を解明することであるが,容易ではない。一つの手がかりは交差拡散を無限大としたときの極限系を導き,極限系からもとの問題に関する知見を得ることである。同次Dirichlet境界条件の下,正値解に対して,α,βに無関係なアプリオリ評価を空間次元が5以下の場合に求めることができた。さらにα=0,β→∞とすると正値定常解についてβu→w^*,v→v^*のように収束する部分列が存在し,(W*,V*)は△w+w(a-cv)=0,△[(1+w)v]+v(b-cv)=0の正値解になることが示される。この極限系に対する正値解集合の構造についても一定の成果を得ることができた。生物の侵入モデルについては1次元空間の下,自由境界x=s(t),侵入種の個体数密度u=u(x,t)について次のような自由境界問題を考える:u_t=u_xx+u(a-u),0<x<s(t),u(0,t)=u(s(t),t)=0,s'(t)=-μu_x(s(t),t)これに初期条件を与え,t→∞のとき解u(t),s(t)がどのような挙動をするかについて,重要な結果を得た。大別すると,(i)s(t)はある定数を超えることはなく,u(t)は0に一様収束する,(ii)自由境界についてs(t)→∞となり,u(t)はある正の関数に収束する,この2つのケースしか起こり得ないことが示された。
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