X線及び硬X線天文学で最も観測が遅れているのが偏光観測である。偏光観測が実現すれば、今までにない物理が明らかになると期待されてきたが、検出器開発の困難さから、観測がほとんど進まなかった。そこでこの状況を打破するため、我々は硬X線領域で感度の高い偏光度検出器の開発を行ってきた。本研究の目的は硬X線領域でカニ星雲の偏光観測を行い、カニ星雲の磁場構造に関する情報を得る事である。そのため、我々が開発した硬X線偏光度検出器PHENEXを2009年に北海道の大樹町から打ち上げ、観測を試みた。しかし、風の状況が思わしくなく、観測時間は3時間以下となってしまった。しかしなから、検出器は正常に動作したことが確認されたので、本年度は我々が開発した検出器の技術的な成果をまとめ、将来どの様にこの検出器を活かしていくのか、そしてさらに性能を向上させるためにはどの様な事が必要かを調べた。 まず我々の検出器を今後どの様に活かしていくのかを調べるため、コンピューターシミュレーションを行った。その結果、開口角を広げる工夫をすることで、ガンマ線バーストの偏光度検出器として役立つ事が分かった。この事に関しては2011年に論文としてまとめた。 また検出器の性能をさらに向上させるには、マルチアノード光電子増倍管(MAPMT)の性能が大きく影響する事が以前から分かっていたので、MAPMTの各種パラメーターと検出器の検出効率の関係を基礎実験とコンピューターシミュレーションから見積もった。その結果を2004年春に開かれた日本物理学会で発表した。
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