若い連星へ流入するガスは、主星と伴星を中心とする二つの原始惑星系円盤を形成する。本研究では、原始惑星系円盤では遠心力と重力がほぼ釣り合っていることに着目し、ガスの速度をケプラー回転とそれからの残差に分離して、連星系でのガスの流れを高い精度で求めた。本年度は、連星の公転面に限定した2次元数値シミュレーションについて、計算法とその結果を学術雑誌に論文として発表した。従来の準粒子法では伴星により多くのガスが降着するという結果であったが、本研究では主星により多くのガスが降着するという結果が得られた。これは、主星と伴星の質量比が1から大きく離れた連星が多いという観測は結果と整合的である。またシミュレーション結果は、すばる望遠鏡とコロナグラフによる若い連星SR24の撮像と、類似した特徴が見られることも確かめられた(Science誌に掲載)。特に主星を中心とする流れと伴星を中心とする流れが衝突してできる構造が、観測とシミュレーションの両方で見つかったことは特筆に値する。さらに解析的な検討を加え、ガスが主星あるいは伴星に束縛される最大の半径を見積る理論も構築した。また近接連星V4046Sgrに見られる公転周期に依存して変化する輝線プロファイルを、原始惑星系円盤の縁に降着流が形成するホットスポットにより説明するモデルも、数値シミュレーションに基づいて作成した。さらにこの計算手法を3次元シミュレーションに拡張する研究も行い、予備的シミュレーションに成功した。解適合格子あるいは多層格子と組み合わせれば、十分に高い空間分解能で3次元シミュレーションが可能であることが明らかになった。
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