若い連星へ流入するガスは、主星と伴星を中心とする二つの原始惑星系円盤を形成する。本研究では、原始惑星系円盤では遠心力と重力がほぼ釣り合っていることに着目し、ガスの速度をケプラー回転とそれからの残差に分離して、連星系でのガスの流れを高い精度で求めている。本年度は、この方法を任意の3次元のポテンシャルに拡張する研究に取り組んだ。流れの良い近似解が未知の場合も、数値シミュレーションに用いるセルの中でガスの速度が重力やコリオリカにより変化することを考慮すると、昨年までの方法と同様に精度が向上することが見いだされた。この改良された方法を渦状銀河でのガスの流れに適用したところ、従来のシミュレーションで発生していた衝撃波の後面で不安定が解消することを見いだした。渦状銀河の研究においてこの不安定(wiggie instability)は速度シアによる物理的なものと見なされ、渦状腕の微細構造や銀河乱流の起源と解釈されている。しかしこの不安定は、密度や速度が衝撃波面の内部でも滑らかに変化すると仮定しているところに原因があると私たちは考えている。密度や速度は衝撃波の前後で階段関数的に変化するはずであるが、数値計算ではこれが鈍る。密度や速度が単調に変化するという条件つきではあるが、従来の計算ではこの鈍った密度・速度分布を補間して数値流束を求めている。この補間により求められた密度と速度を使うと、数値流束は衝撃波の前後の数値流束より異常に大きくなり、衝撃波後面での不規則な密度構造や乱れた速度場を与える。この結果は国内外の学会で口頭発表し、学術雑誌に投稿した。現在、査読者から提出された疑問に答えるための追加計算を行っている。
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