本年度は3次元シミュレーションと衝撃波の取り扱いに重点を置いて研究を行った。周連星円盤や原始惑星円盤は幾何学的に薄いので、ガスは連星の公転軌道面に集中している。このためこれまでシミュレーションでは公転面内の2次元の流れに絞り、解像度と動径方向のダイナミックレンジを向上させてきた。しかし実際には星からの距離により円盤も厚みが変わるなど、3次元でなれば再現できない流れや構造もある。このために解像度を下げ、計算領域を連星の周囲だけに絞って3次元シミュレーションを行った。周連星ガス円盤からラグランジュ点を通して流れ込んだガスが、主星と伴星のそれぞれの周囲に原始惑星円盤を形成するというに本構造に変化はないが3次元で初めて明らかになった構造がある。原始惑星円盤はガスが流入する側が厚い。また主星と伴星の問にはブリッジと呼ばれる、二つの流れの衝突により圧縮されたガスの架け橋ができるが、この構造は高さにより異なる。これは公転軌道面から離れると二つの流れが衝突後に逸れるためである。また3次元シミュレーションと平行して、衝撃波の取り扱いについて数値実験を行った。本研究でも使用している計算コードで銀河衝撃波のシミュレーションを行うと、不自然な構造が現れることが明らかになった。詳細に検討すると、数値格子に対して傾いた強い衝撃波では、偽の渦やゆらぎが発生しやすいことが明らかになった。この問題は他の研究者の計算上コードでも発生しているはずであることを突き止めた。数値粘性を増やしたほうが、この問題が軽減される。 上記の理論研究とは別に共同研究者(CoI)として若い連星の電波観測をAL漁など複数の望遠鏡に提案した。しかし残念ながらいずれの提案も採択には至っていない。
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