研究概要 |
本研究の目的はブラックホール磁気圏におけるイオンと電子からなる通常プラズマと陽電子と電子からなる対プラズマの挙動の違いが天文学的高エネルギー現象への影響を解明することである。最終的には通常プラズマと対プラズマが混在するような実際の天体プラズマの数値シミュレーションを行い,とくに相対論的ジェットの形成機構に対する影響を明らかにする。 研究課題初年度に当たる平成21年度はその基礎となる一般化された一殻相対論的電磁流体力学(GRMHD)方程式の定式化を行い,その方程式の示唆するさまざまな奇妙なプラズマ現象について解析を進めた。その中でも,太陽質量程度のブラックホール近傍のような大きな潮汐力のあるところでは,電荷分離により電気抵抗がなくても磁気リコネクションが起こりえることを示唆した。さらに,そのような特異な磁気リコネクションが起こるのに必要な電荷分離について線形解析を行い,自発的に電荷分離が起こる条件を明らかにした。今後,そのような特異な磁気リコネクションや電荷分離について計算するための一般化されたGRMHD方程式を用いた数値計算法を開発し,大規模計算を行う。一般化されたGRMHDによる数値計算を行うためには一般化されたオームの法則を取り扱う必要がある。その計算は膨大になるためにまともにそれを計算することは得策ではないと思われる。何らかの一般化されたオームの法則の近似式を用いる必要があるが,一般にそれにより因果律を満たさなくなることが多い。そのような因果律の問題を回避しながらブラックホール磁気圏の数値計算を行うための検討を早急に行う。
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