研究課題/領域番号 |
21540244
|
研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
石丸 友里 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (90397068)
|
研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 理論天体物理学 / 銀河の化学進化 / 金属欠乏星 / 銀河系 / 矮小銀河 / rプロセス / 超新星爆発 / 元素合成 |
研究概要 |
研究の目的は、銀河系ハローにある金属欠乏星の化学組成を手がかりに、我々の銀河系の化学進化の観点からrプロセス元素の起源を明らかにすることである。金属欠乏星の観測的特徴として、rプロセス元素の化学組成比が非常に大きく分散することが知られている。本研究はこれまでに、a) 個々の超新星爆発が誘発する星形成と共に銀河系が形成されたという銀河形成論に基づけば、rプロセスの起源は限られた質量の星の超新星爆発にあることを銀河の非一様化学進化モデルを用いて議論してきた。 しかし最近の元素合成の研究によって、中性子星同士の合体の方がrプロセスの起源としてより有力と着目されている。もし b) 銀河系が様々な星形成率の矮小銀河の衝突・合体から形成されたならば、中性子星合体説でも観測データを説明できる可能性がある。そこで本研究では、a,b各仮説に基づく銀河系の非一様化学進化モデルを開発する。平成24年度は、(b) の仮説に従って、異なる星形成史の矮小銀河の合体から銀河系ハローを形成する化学進化モデルの構築を行った。矮小銀河の質量関数、銀河質量と星形成率、ガス放出率の相関関係を吟味し、銀河系ハローのrプロセス元素の化学組成の分散を説明できるかを検討した。その結果、大質量の矮小銀河ほど星形成率が高ければ、rプロセス元素の起源が中性子星の合体にある場合でも、観測データと矛盾しない結果が得られることを示した。とりわけ、中性子星の合体説では、観測されているようなr過程元素が過剰な星を説明することが難しいと考えられていたが、これらの星も矛盾なく説明できる可能性を示唆する結果が得られ始めた。今後はさらに定量的な議論を行い、確定的な結論を得るために、(b)の仮説に基づく銀河系非一様化学進化モデルを構築する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来は、rプロセス元素の起源が中性子星の合体にある場合は、銀河系ハローで観測されている化学組成の分散を説明できないとされてきた。しかし、本研究では矮小銀河の衝突・合体から銀河系ハローが形成されたならば、元素合成理論と銀河の化学進化との間の矛盾が解消できるという新たな仮説を提案する。昨年度までに矮小銀河の進化モデルを構築し、観測で見られるr過程元素の分散に加え、r過程が過剰な星もこのモデルで矛盾なく説明することができた。この結果は、この分野の研究集会においても国内外で高く評価され、今後の結果が期待されている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はさらに、矮小銀河の衝突・合体から銀河系ハローが形成される場合の非一様化学進化モデルを構築し、様々な元素の分散や金属量分布などについての理論的予測を観測データと比較することによって、より定量的な議論を 行う。系統だてたパラメータサーベイの結果を、共同研究としてr過程の元素合成理論と比較検討していく予定である。
|