研究課題
本研究の目的は、銀河系ハローにある金属欠乏星の化学組成を手がかりに、我々の銀河系の化学進化の観点からrプロセス元素の起源を明らかにすることである。rプロセスの起源の候補天体は,(a) 重力崩壊型超新星爆発と(b) 中性子星同士の合体に大別される.本研究ではこれまでに,個々の超新星爆発によって星形成が誘発されるという仮説に基づいて,初期の銀河系における星間ガスの非一様性を考慮した化学進化モデルを用いて,(a) の仮説で金属欠乏星の化学組成を説明可能なことを示した.一方,元素合成の最近の研究からは,超新星爆発でrプロセスを起こすことが非常に難しいことが指摘され,(b)の中性子星同士の合体の方が,rプロセスが起こり得ることが議論されている.特に平成25年6月には,短いガンマ線バーストで,rプロセスに起因したと見られる電磁波の放射が見つかり,(b)の仮説は非常に注目されるようになった.ただし (b)の仮説の難点は,中性子星の合体の要する時間が長すぎて,金属欠乏星に見られるrプロセス元素の過剰を説明できないと言われていた.この問題を解決策として,本研究では銀河系が様々な星形成率のサブハローの衝突・合体から形成されたという仮説を立てた.平成25年度は、この仮説に従ってサブハローの化学進化モデルを構築し,中性子星合体によるrプロセス元素の増加率と,星形成率,星間ガスのアウトフロー率との関係性を系統的に調べた.その結果、大質量のサブハローほど星形成率が高ければ、様々な質量のサブハローが集積した銀河系ハローで,金属欠乏星に見られる化学組成比の分散が説明できることが示された.さらに,小質量のサブハローで星間ガスのアウトフローの効率が高ければ,一部の金属欠乏星に見られるrプロセス過剰も説明できる可能性が示された.以上の結果は,rプロセスの起源が(b)中性子星合体にあることを強く支持することになる.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
AIP Conference Proceedings “The 12th international symposium on Origin of Matter and Evolution of Galaxies”
巻: - ページ: 印刷中
天文月報
巻: 107 ページ: 96, 106