研究課題
三年計画の最終年度として、研究をとりまとめた。引き続き、銀河リッジX線放射の起源天体のX線、および赤外線データを取得し、その解析を進めると共に、学会発表を行った。特に、以下を実施した。(1)チャンドラX線衛星によるリッジ放射深観測領域データからのX線点源の抽出と個々の解析。チャンドラX線衛星の全データの解析から2002個の点源を検出し、その位置、X線光度・色を求め、スペクトルを作成した。(2)南アフリカIRSFを用いた近赤外線撮像観測によるX線・近赤外線同定。IRSF望遠鏡SIRIUS装置を用いて、同観測視野を掃過した。これで、K帯域16等級までの近赤外線点源リストを作成し、X線点源との同定を行った。その結果、X線点源の約16%に近赤外線対応天体が存在した。(3)すばる望遠鏡を用いた、近赤外線分光による種族同定。近赤外線分光による種族同定をすばる望遠鏡搭載多天体分光装置(MOIRCS)で個々の近赤外線同定天体の種族決めを行い、X線解析における性質、近赤外線撮像観測における性質に基づいて、リッジ放射を構成する種族についてまとめた。その結果、比較的暗く強い鉄輝線と高温X線スペクトルを持つが、赤外線では晩期型星の特徴である一酸化炭素の吸収線を持つ天体を多数発見した。これは、低温X線スペクトルを示す晩期型星連星系や、赤外線で輝線スペクトルを示す、降着円盤を持つ白色矮星連星系(Cataclysmic Variables)とは異なる、新種の天体である。我々は、それらは降着円盤を持たない非接触型連星系の白色矮星連星系(Pre-CataclysmicVariablles)と考えた。これによって、鉄輝線付近のリッジ放射の構成種族には、これまで考えられていた晩期型星連星系や降着円盤を持つ白色矮星連星系ではなく、降着円盤を持たない非接触型連星系の白色矮星連星系が主成分である可能性を提案した。
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Publication of Astronomical Society Japan
巻: (印刷中)
http://ads.nao.ac.jp/abs/2012arXiv1202.6226S
巻: 63S ページ: 759-769
http://pasj.asj.or.jp/v63/sp3/63s318/63s318-frame.html
http://www.isas.jaxa.jp/home/ebisawalab/ja/research/index.html