我々は、「ひので」衛星に続いて、わが国のスペース太陽コミュニティーが2017年頃の打ち上げをめざしている次期太陽観測衛星計画SOLAR-Cに搭載するX線望遠鏡の検討を進めている。この望遠鏡は太陽観測ではこれまでに行なわれたことのない、光子計測型の軟X線撮像観測により、フレアにともなう粒子加速や衝撃波の形成、およびプラズマの加熱過程など、太陽コロナが示す多様な磁化プラズマの活動現象を引き起こす物理過程を明らかにすることを目的としている。しかし、太陽からの軟X線フラックスは非常に大きいため、本望遠鏡の焦点面検出器には高速の画像読み出しが可能なCMOS撮像センサーが不可欠である。本研究課題では、このセンサーの開発を目指している。 本年度、我々は、上記サイエンス実施のために必要な、望遠鏡のスペクトル分解能、時間分解能、空間分解能と現状のCMOS撮像センサーの読み出し速度以外の性能(X線への感度、電子雲の広がりなど)を考慮して、必要な読み出し速度の検討を行った。現状のセンサーの(読み出し速度以外の)性能では、1秒間に千枚程度という非常に高速な読み出しが必要であることが分かった。一方、研究実施計画では、本年度に、テストCMOSセンサーへのX線照射実験を行うことを予定していたが、メーカーのセンサー開発の遅れにより実施できなかった。そこで、照射実験を来年度に延期し、本年度は、実験項目の十分な検討と、実験設備の整備を行った。CMOSセンサの開発は、各メーカーがしのぎをけずっており、月単位で、状況が変化している。現状、不確定な要素も多数あるが、近年のCMOS撮像センサの発展を背景に、太陽X線コロナに対する光子計測型の撮像観測が手の届く範囲になりつつある。我々は、各メーカーの状況を調査しつつ、センサーの評価試験・開発に向けた準備を進めている。
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