研究概要 |
我々は現在、次期太陽観測衛星SOLAR-Cに搭載する次世代X線望遠鏡の検討を進めている。この望遠鏡は太陽観測ではこれまでに行なわれたことのない光子計測型の軟X線撮像観測により、フレアにともなう粒子加速や衝撃波の形成、およびプラズマの加熱過程など、太陽コロナが示す多様な磁化プラズマ活動現象の物理過程を明らかにすることを目的としている。しかし、太陽からの軟X線フラックスは非常に大きいため、本望遠鏡の焦点面検出器には高速の画像読み出しが可能なCMOS撮像センサーが不可欠である。本研究課題では、このセンサーの開発を目指している。 本年度、我々は生産ラインをモニタすることを主目的として開発された裏面照射型CMOSデバイスを入手し評価を行った。今回入手したデバイスは、初めて実用化された裏面照射型CMOSであり、科学目的に用いるにはノイズが大きく課題が多い。しかし、我々はFe55から生じるX線(Mn K-α=5.9keV,Mn K-β=6.4keV)を用いた照射実験を行い、取得した約6000枚のデータを解析することで、本デバイスが以下の特性を持っていることを評価した。(1)ディテクタに入射した光子1つが作る電子雲の半径は1ピクセル以下である,(2)1光子が作ったシグナルが1ピクセル内に収まったイベントのみを集めてエネルギースペクトルを作ると、Mn K-αとMn K-βの2つのラインが十分に分解出来る。(3)1光子が作ったシグナルが複数のピクセルに渡って広がっているイベントについては、該当ピクセルのシグナルを足し合わせると入射した光子1個のエネルギーに相当する、つまりシグナルのロスがない。これらの特性は、今後ノイズを低減させることが出来れば、裏面照射型CMOSデバイスを光子計測型望遠鏡の検出器として採用することが出来るということを示しており、光子計測型望遠鏡の実現に一歩近づいた。
|