研究概要 |
2年度目として,さまざまな修正重力理論における光の伝播の問題を検討した。観測との比較を容易にする定式化を与えた。時空の計量から計算するものではなく,光の曲り角のレベルで現象論的に修正を加えた。ただし,任意の微分関数で修正項を表す事で,微分可能多様体を前提とする相当幅広い範囲の修正重力理論を扱えるように工夫した。そして,マイクロ重力レンズの観測量である増光率(および光度曲線)に違いが一般的に現れることを証明した。ただし,逆2乗型の補正項のみ,キャンセルの結果,光度曲線に違いが現れない事を示した。具体例として,湯川型の修正重力理論への観測的制限もつけた(Asada2011)。 また,一般相対性理論の新しい検証可能性として,3体相互作用に着目した。特に,一般相対論的な3体問題の「直線解」を初めて導いた(Yamada,Asada2010)。これは,ニュートンの万有引力におけるラグランジュ点L1,L2,L3への相対論的補正でもあり,太陽系においては数メートル程度のずれとなる。今回の成果は,一般相対論を含む重力理論における3体相互作用研究に関する礎を与えるものである。そして,我々が発見した直線解の「唯一性」を含むいくつかの性質(例えば,距離と質量を同一にすれば,3体系の角速度が小さくなること)を数学的に証明した(Yamada,Asada2011)。これらの計算は,多体系からの重力波放出の研究への応用が今後期待される。
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