研究概要 |
宇宙物理学における3大問題は、(1)「宇宙初期(インフレーション)」(2)「現在の宇宙の加速度的膨張(ダークエネルギー)」(3)「超高エネルギー宇宙線」であり、古典重力理論としての一般相対性理論の修正を考える必然性が高まっている。 相対論的な重力理論は「非自明なトポロジー」をもつ時空を許す。そうした特異な時空構造を観測的に探査することで、強い重力極限での理論模型を制限することは大変意義深い。 代表例のひとつが、エリスワームホール(いわゆる時空トンネル)であり、それを観測的に発見もしくは存在確率に制限を課す天体物理的な方法を提案した(Toki,Kitamura,Asada,Abe,ApJ2011)。また、Dey and Senが導いたエリスワームホールによる光の曲がり角の数式に不備がある点を指摘して、正しい数式および漸近展開の表式を導いた(Nakajima,Asada,PRD2012)。 重力理論の検証において、惑星軌道の近日点移動が重要な役割を果たしてきた。従来は太陽重力によるポストニュートン効果が調べられてきた。今後の精密天文学の進展を期待して、惑星重力(最大が木星)によるポストニュートン効果を解析的手法に基づき調べた。近日点移動への補正が、惑星の軌道角運動量と軌道半径(有効的な四重極モーメント)からもたらされることを指摘した。適度に大きな数値係数が現れるが、太陽系においては、惑星重力による近日点移動へのポストニュートン効果はこれから2、30年内に観測できる見込みが少ないことを示した(Yamada,Asada,MNRAS in press 2012)。
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