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2011 年度 実績報告書

微視的理論による核物質の動的現象と熱力学的性質の研究

研究課題

研究課題/領域番号 21540253
研究機関東北大学

研究代表者

小野 章  東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20281959)

キーワード分子動力学 / 原子核多重破砕 / 核物質の状態方程式 / 液相気相相転移 / 重イオン衝突 / 中性子量 / 単極子振動 / 超並列計算
研究概要

本研究では,重イオン衝突(核子あたりの入射エネルギー数十から数百MeV程度)や中性子星・超新星爆発などにおいて実現する核物質の動的現象と熱力学的性質を解明するため,微視的理論による研究を推進することを目的としている.特に,反対称化分子動力学(AMD)を用いて,核子多体系の動力学計算と統計計算の両方を実施し,統一的な理解を目指す.
重イオン衝突における陽子・中性子の放出とクラスター・フラグメント生成については,前年度までは計算と実験の不整合の問題があった.そこで,これまで考えてきたクラスターを作る相関に加え,複数のクラスター間の相関も重要であると仮定し,その拡張をAMDに行なった.その結果,実験での測定器の条件を考慮すると,核子あたり50MeV程度の重イオン衝突の大局的様相がAMD計算で再現された.このことから,従来の常識よりも実際はクラスター相関が強いといえる.
入射核と標的核の間の陽子・中性子の移行(アイソスピン拡散)については,AMD計算を実施し,衝突径数と対称エネルギーの密度依存性(Lパラメータ)に対する依存性を他のモデル計算と比較した.その結果,AMDの結果は他のモデルと類似したL依存性を示したが,アイソスピン拡散の絶対値と衝突径数依存性にはモデルによるばらつきがあることが判明した.したがって,アイソスピン拡散以外の観測量にも注意して計算と実験の比較を進めていくべきである.
中性子星・原始中性子星に対応する大規模計算など様々な応用を想定して,AMDコードの整備(ライブラリ化)を始めた.関連して,計算が比較的困難なゆらぎの項(波束の分裂)を上述のクラスター間相関で置き換える可能性について,着想が得られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アイソスピン拡散のAMD計算は実現し一定の結果は得られたが,当初予定していた分析は終わっていない.その一方,当初は考えていなかったクラスター間相関という新しい着想が得られたことによって,クラスター相関が非常に強いという新たな知見が得られた.

今後の研究の推進方策

アイソスピン拡散については,23年度の成果により反応の大局的様相の高精度の記述が可能となったことを活用して,さらに発展した研究を目指す.アイソスピン拡散のほか,重イオン衝突での核子やクラスターの生成量とスペクトルなどを総合的に分析し,反応機構のしっかりした理解に基づいて,状態方程式の解明を進める予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 多重破砕反応におけるクラスター相関とクラスター間相関2012

    • 著者名/発表者名
      小野章
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] 準位密度と状態方程式との関わり2012

    • 著者名/発表者名
      小野章
    • 学会等名
      RCNP研究会「リングサイクロトロン施設の将来」
    • 発表場所
      大阪大学核物理研究センター
    • 年月日
      2012-03-21
  • [学会発表] 反対称化分子動力学による核物質と核衝突の研究2012

    • 著者名/発表者名
      小野章
    • 学会等名
      研究会「大規模計算による原子核研究の展開-核子多体系を中心に-」
    • 発表場所
      理化学研究所(和光)
    • 年月日
      2012-01-25
  • [学会発表] Interplay between collision dynamics and nuclear matter properties from microscopic view point2011

    • 著者名/発表者名
      小野章
    • 学会等名
      International Workshop on Multifragmentation and Related Topics
    • 発表場所
      フランスCaen
    • 年月日
      2011-11-04
  • [学会発表] 重イオン衝突で探る状態方程式2011

    • 著者名/発表者名
      小野章
    • 学会等名
      RIBFミニワークショップ「中性子星の核物質」
    • 発表場所
      理化学研究所(和光)
    • 年月日
      2011-09-13

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公開日: 2013-06-26  

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