研究概要 |
非可換空間が実現している最も単純な系は量子ホール系である。最近のvon Klitzingグループの実験報告によると2層量子ホール系において,層間にジョセフソン効果とみなせる現象が発見されている. Phys.Rev.Lett.104(2010)116802を参照.これは20年以上前に私が初めて予言した現象である.本研究目的の「2次元空間の非可換性と低エネルギー物理現象」の緊急の課題として,この実験結果の解析と新しい予言を求めて,2層量子ホール系における電流の理論的解析を行った.先ず,複合ボソンのボーズ・アインシュタイン凝縮の結果として,2層間に層間コヒーレンスが発生し,2層での電子の位相差θが物理量になることを示した.更に,非可換空間での運動方程式を求めることにより,この位相差θの満たすべき方程式を導いたが,これはサインゴードン方程式になる.最も重要な結果として,位相差の微分dθ/dxがx軸方向に流れる面内ジョセフソン電流となり,sinθが層間ジョセフソン電流になることを証明した.この解析の結果として,入射電流が臨界値以下の時のみ,層間トンネル電流がコヒーレント電流になる事を示した.これは上記の実験結果をよく説明する.更に,試料に横磁場をかけたときの臨界磁場の変化を調べたが,これは新しい予言である.研究成果は原著論文2編に纏め,投稿中である.私の属する実験グループ(澤田安寿京都大学教授主催)にこの予言の検証を提言した.なお,試料は上記のvon Klitzingグループより提供を受け,現在,実験の準備を始めた所でもある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,「2次元空間の非可換性と低エネルギー物理現象」の緊急課題として,2層量子ホール系層間ジョセフソン効果の研究を行った.これは当初の「研究の目的」に記載されていなかった研究課題であり,このために,当初の研究目的の達成に多少の遅れがでた.
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