研究課題/領域番号 |
21540254
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
江澤 潤一 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 客員研究員 (90133925)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非可換空間 / 非可換ソリトン / 量子ホール効果 / 量子位相 / 2層量子ホール系 / ジョセフソン電流 / スカーミオン / ボーズ凝縮 |
研究概要 |
非可換空間が実現している最も単純な系は量子ホール系である.前年度は占有率ν=1の二層系におけるゴールドストーンモードが引き起こすジョセフソン効果の研究を行った.この研究を発展させ,本年度は,占有率ν=2の二層系におけるゴールドストーンモードの解析を遂行した.この系は3つの相をもつ.3つの相の内,比較的単純な磁性相(spin ferromagnet phase)と擬スピン磁性相(pseudospin ferromagnet phasea)においての解析は行われていたが,傾斜反強磁性相(canted antiferromagnet phase)におけるゴールドストーンモードの研究は全く行われていなかった.傾斜反強磁性相は本質的にSU(4)構造を持ち,スピンと擬スピンの絡み合ったゴールドストーンモードが本質的な役割を果たす.この相におけるゴールドストーンモードの有効理論を構築した.これに基づき,層間ギャップエネルギーが小さい極限で,系に純粋なスピン流が流れる事を示した.これは実験的に検証可能である.研究成果は原著論文2編に纏め国際的に著名な学術誌に発表した.さらに,本科研費で得た成果を928ページの大著"Quantum Hall Effects: Recent Theoretical and Experimental Developments (World Scientific)"に集大成し出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,占有率ν=2の二層系ホール系のゴールドストーンモードの研究とこれに関連した新しい物理現象の研究を行った.これは当初の「研究の目的」に記載されていなかった研究課題であるが,研究目的の達成はおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,「非可換空間上の位相的ソリトン」として,占有率ν=2の二層系ホール系におけるスカーミオンとそれを分解したメロンの研究を遂行する.なお,当初の研究計画に記載した「グラフェン上の非可換空間における物理現象」の研究は特に新しい発見が期待できない,と判断し行わないことにした.
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