研究課題/領域番号 |
21540257
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松井 哲男 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00252528)
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研究分担者 |
藤井 宏次 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10313173)
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キーワード | クォーク・グルーオンプラズマ / RHIC,LHC実験 |
研究概要 |
この研究は、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)などで行われている超高エネルギー原子核衝突によって生成される、クォーク・グルーオンプラズマと呼ばれる物質の極限状態の時空発展を理論的に記述し、実験の観測量にその生成のシグナルがどのように現れるかを解明することが目的であった。これまでの研究では流体模型によるシミュレーションの結果が実験結果を良く再現しているが、「HBTパズル」のように流体模型では説明出来ない効果もあり、更に理論的に立ち入った研究が求められていた。また、この代表研究者の松井がクォーク・グルーオンプラズマ生成のシグナルとして以前から提案していたJ/ψ生成抑圧の効果もRHICの実験でも確認されたが、その詳細の解釈については理論的な検討が十分なされていなかった。「HBTパズル」については、流体模型に取り入れられていない効果として平均場の効果を検討して来たが、実験結果を十分説明するには至らなかった。この研究は松井が指導してきた学生(服部)の学位論文としてまとめられ、論文として発表された。J/ψ生成抑圧の問題に付いては、ハドロン衝突におけるJ/ψ生成の基本メカニズムについての現状分析を行った。その中から、J/ψ生成の直接過程といわれる2g→g+J/ψ過程に注目し、QCD素過程の計算を行った。この研究は松井の指導した学生(渡邊)の修士論文としてまとめられた。分担研究者の藤井はもう一人の学生(佐野)との共同研究で、ランダム行列模型を用いた有限密度領域のQCD相図の研究を行い、研究成果を2つの論文で発表した。この研究は低エネルギー領域の原子核衝突実験で生成が期待されている有限バリオン密度の領域でのQCD物質の極限状態を理解する上で重要な成果である。尚、これらの成果を発表予定であった2011年3月に予定されていた日本物理学会年会(新潟大学)は、東日本大震災のため中止となった。
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